― 肝転移・肺転移と、肝臓がん・肺がんの違い ―
CHECK
MESSAGE
診察で「肝臓にがんがあります」「肺に転移があります」と説明されると、とても驚かれると思います。そのときにまず知っておいていただきたいのは、がんが見つかった場所の名前と、がんの種類の名前は、必ずしも同じではないということです。
BASIC
転移とは、がん細胞がもともと発生した場所から離れて、血液やリンパの流れなどを通じて別の臓器に広がることです。転移した先にできた病変は、見つかった臓器のがんではなく、もともとのがんと同じ性質を持つ病変として扱われます。1
肝臓に病変があっても、治療方針は「大腸がんの肝転移」として考えます。
肺に病変があっても、治療方針は「胃がんの肺転移」として考えます。
LIVER
肝臓にがんがある場合、大きく分けて「肝臓そのものから発生したがん」と「別の臓器のがんが肝臓に広がったもの」があります。後者を肝転移、または転移性肝腫瘍と呼びます。
肝臓の細胞や胆管の細胞など、肝臓周辺の組織から発生したがんです。肝細胞がん、肝内胆管がんなどが含まれます。
大腸がん、胃がん、膵がん、乳がん、肺がんなど、別の臓器のがんが肝臓に広がった状態です。治療方針は、もともとのがんの種類をもとに考えます。3
LUNG
肺でも同じことが起こります。肺そのものから発生したがんは肺がんですが、別の臓器のがんが肺に広がった場合は肺転移と呼びます。肺は、さまざまながんが転移しやすい臓器のひとつです。4
肺の細胞から発生したがんです。非小細胞肺がん、小細胞肺がんなど、肺がんとしての分類や治療方針で考えます。
大腸がん、乳がん、腎がん、頭頸部がんなど、別のがんが肺に広がった状態です。治療は、肺がんとしてではなく、もともとのがんの治療として考えることが多くなります。4
転移という言葉は、とても強い不安を伴います。しかし、転移があるからといって、ただちに治療ができない、何もできないという意味ではありません。がんの種類、広がり方、症状、体力、これまでの治療内容によって、薬物療法、手術、放射線治療、緩和ケアなどを組み合わせて考えます。
大切なのは、「どこにあるか」だけでなく、「どこから発生したがんなのか」「今の病状で何を目標に治療するのか」を確認することです。
TREATMENT
肝転移や肺転移がある場合でも、治療方針は一人ひとり異なります。同じ「肝転移」「肺転移」という言葉でも、がんの種類や転移の数、場所、症状の有無によって、考え方は変わります。
もともとのがんを確認する
大腸がん、胃がん、膵がん、乳がん、肺がんなど、原発となるがんの種類をもとに治療を考えます。
広がり方を確認する
転移の場所、数、大きさ、増える速さ、症状の有無を画像検査や血液検査などで評価します。
治療の目標を決める
治すことを目指すのか、病気を抑えるのか、症状を和らげるのかを、患者さんの希望も含めて考えます。
QUESTION
診察室で急に説明を受けると、何を聞けばよいかわからなくなることがあります。次のような質問は、遠慮なく確認してよい内容です。
「これは肝臓がん・肺がんですか、それとも転移ですか」
「もともとのがんはどこから発生したものですか」
「転移は何か所ありますか」
「手術や放射線治療の選択肢はありますか」
「薬物療法を行う場合、目的は何ですか」
「今後、どのような症状に注意すればよいですか」
▶ メモを見ながら質問して大丈夫です
診察前に聞きたいことを書いておくと、限られた時間でも大切なことを確認しやすくなります。ご家族と一緒に聞くことも役立ちます。SUPPORT
「転移」「肝臓にがん」「肺に影」という言葉だけを聞くと、不安が大きくなります。しかし実際の治療方針は、がんの種類、病状、検査結果、体力、生活状況によって変わります。わからない言葉があれば、その場で理解できなくても構いません。あとから聞き直してよい内容です。
主治医・看護師
病名、転移の場所、今後の検査や治療について確認できます。
がん相談支援センター
治療、生活、費用、仕事、家族の不安などを相談できます。
ご家族と一緒に整理する
一人で受け止めきれない説明は、ご家族と一緒に聞いたり、後日確認したりして構いません。
つらさも相談する
病状の説明だけでなく、不安、眠れない、食べられない、痛いなどの症状も大切な相談内容です。
SUMMARY
肝臓や肺にがんが見つかっても、それがすぐに「肝臓がん」「肺がん」を意味するとは限りません。別の臓器のがんが肝臓や肺に広がった場合は、肝転移・肺転移として、もともとのがんの種類をもとに治療方針を考えます。
言葉だけで不安を大きくしすぎず、「どこから発生したがんなのか」「どこに広がっているのか」「今できる治療は何か」を、医療者と一緒に整理していきましょう。
REFERENCES