vol.04

肝臓や肺に「がんがある」と言われたときに

― 肝転移・肺転移と、肝臓がん・肺がんの違い ―

こんな疑問はありませんか?

  • 「肝臓にがん」と言われたら、肝臓がんという意味なのか
  • 「肺に影がある」と言われたら、肺がんにもなったという意味なのか
  • 肝転移・肺転移という言葉の意味がよくわからない
  • 転移と聞くと、もう治療できないのではないかと不安になる

「肝臓にがん」「肺にがん」=肝臓がん・肺がん、とは限りません

診察で「肝臓にがんがあります」「肺に転移があります」と説明されると、とても驚かれると思います。そのときにまず知っておいていただきたいのは、がんが見つかった場所の名前と、がんの種類の名前は、必ずしも同じではないということです。

大切なのは「どこから発生したがんか」です

たとえば大腸がんが肝臓に広がった場合、肝臓にがんがあっても、基本的には「肝臓がん」ではなく「大腸がんの肝転移」と考えます。同じように、大腸がんが肺に広がった場合は「肺がん」ではなく「大腸がんの肺転移」です。12

転移とは何ですか?

転移とは、がん細胞がもともと発生した場所から離れて、血液やリンパの流れなどを通じて別の臓器に広がることです。転移した先にできた病変は、見つかった臓器のがんではなく、もともとのがんと同じ性質を持つ病変として扱われます。1

例 1

大腸がんが肝臓に広がった場合

肝臓に病変があっても、治療方針は「大腸がんの肝転移」として考えます。

例 2

胃がんが肺に広がった場合

肺に病変があっても、治療方針は「胃がんの肺転移」として考えます。

肝転移と肝臓がんの違い

肝臓にがんがある場合、大きく分けて「肝臓そのものから発生したがん」と「別の臓器のがんが肝臓に広がったもの」があります。後者を肝転移、または転移性肝腫瘍と呼びます。

肝臓がん

肝臓の細胞や胆管の細胞など、肝臓周辺の組織から発生したがんです。肝細胞がん、肝内胆管がんなどが含まれます。

肝転移・転移性肝腫瘍

大腸がん、胃がん、膵がん、乳がん、肺がんなど、別の臓器のがんが肝臓に広がった状態です。治療方針は、もともとのがんの種類をもとに考えます。3

肺転移と肺がんの違い

肺でも同じことが起こります。肺そのものから発生したがんは肺がんですが、別の臓器のがんが肺に広がった場合は肺転移と呼びます。肺は、さまざまながんが転移しやすい臓器のひとつです。4

肺がん

肺の細胞から発生したがんです。非小細胞肺がん、小細胞肺がんなど、肺がんとしての分類や治療方針で考えます。

肺転移

大腸がん、乳がん、腎がん、頭頸部がんなど、別のがんが肺に広がった状態です。治療は、肺がんとしてではなく、もともとのがんの治療として考えることが多くなります。4

「転移」と聞いても、すぐに“何もできない”という意味ではありません

転移という言葉は、とても強い不安を伴います。しかし、転移があるからといって、ただちに治療ができない、何もできないという意味ではありません。がんの種類、広がり方、症状、体力、これまでの治療内容によって、薬物療法、手術、放射線治療、緩和ケアなどを組み合わせて考えます。

大切なのは、「どこにあるか」だけでなく、「どこから発生したがんなのか」「今の病状で何を目標に治療するのか」を確認することです。

治療方針はどのように決まりますか?

肝転移や肺転移がある場合でも、治療方針は一人ひとり異なります。同じ「肝転移」「肺転移」という言葉でも、がんの種類や転移の数、場所、症状の有無によって、考え方は変わります。

1

もともとのがんを確認する

大腸がん、胃がん、膵がん、乳がん、肺がんなど、原発となるがんの種類をもとに治療を考えます。

2

広がり方を確認する

転移の場所、数、大きさ、増える速さ、症状の有無を画像検査や血液検査などで評価します。

3

治療の目標を決める

治すことを目指すのか、病気を抑えるのか、症状を和らげるのかを、患者さんの希望も含めて考えます。

主治医に確認してよい質問

診察室で急に説明を受けると、何を聞けばよいかわからなくなることがあります。次のような質問は、遠慮なく確認してよい内容です。

質問の例

「これは肝臓がん・肺がんですか、それとも転移ですか」
「もともとのがんはどこから発生したものですか」
「転移は何か所ありますか」
「手術や放射線治療の選択肢はありますか」
「薬物療法を行う場合、目的は何ですか」
「今後、どのような症状に注意すればよいですか」

▶ メモを見ながら質問して大丈夫です

診察前に聞きたいことを書いておくと、限られた時間でも大切なことを確認しやすくなります。ご家族と一緒に聞くことも役立ちます。

言葉だけで一人で判断しないでください

「転移」「肝臓にがん」「肺に影」という言葉だけを聞くと、不安が大きくなります。しかし実際の治療方針は、がんの種類、病状、検査結果、体力、生活状況によって変わります。わからない言葉があれば、その場で理解できなくても構いません。あとから聞き直してよい内容です。

主治医・看護師

病名、転移の場所、今後の検査や治療について確認できます。

がん相談支援センター

治療、生活、費用、仕事、家族の不安などを相談できます。

ご家族と一緒に整理する

一人で受け止めきれない説明は、ご家族と一緒に聞いたり、後日確認したりして構いません。

つらさも相談する

病状の説明だけでなく、不安、眠れない、食べられない、痛いなどの症状も大切な相談内容です。

最後に

肝臓や肺にがんが見つかっても、それがすぐに「肝臓がん」「肺がん」を意味するとは限りません。別の臓器のがんが肝臓や肺に広がった場合は、肝転移・肺転移として、もともとのがんの種類をもとに治療方針を考えます。

言葉だけで不安を大きくしすぎず、「どこから発生したがんなのか」「どこに広がっているのか」「今できる治療は何か」を、医療者と一緒に整理していきましょう。

参考資料

  1. National Cancer Institute. Metastatic Cancer: When Cancer Spreads.
  2. National Cancer Institute. NCI Dictionary of Cancer Terms: Metastasis.
  3. American Cancer Society. Liver Metastases: Cancer Spread to Liver.
  4. American Cancer Society. Lung Metastases: Cancer Spread to Lungs.
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文責
腫瘍内科 川村 佳史