FOR FAMILY

「食べてほしい」と
思うご家族へ

無理に食べさせる前に、知っておいてほしいこと

こんなふうに考えていませんか

  • 本人の食事をどうしよう
  • 栄養を取らせなきゃ
  • 食べないと、もっと弱ってしまうのでは
  • 少しでも食べて体力をつけてほしい
  • せっかく作ったものを、一口でも食べてほしい

そう思うのは、とても自然なことです

食事は、単なる栄養ではありません。家族で過ごす時間であり、愛情を伝える手段でもあります。患者さんが食べられない姿を見ることは、ご家族にとっても大きな不安になります。

だからこそ、「食べてほしい」と思う気持ちは、患者さんを大切に思う気持ちの表れです。この記事は、その気持ちを否定するためのものではありません。

でも、もし「食べること」自体がつらい時間になっていたら?

患者さんは、ご家族を悲しませたくなくて「本当は食べるのがつらい」と言えないことがあります。無理に食べようとすることで、吐き気、腹部膨満感、息苦しさ、疲労感が強くなることもあります。

大切なのは、「食べさせること」そのものではなく、患者さんが安心して過ごせるように、食べるつらさを減らしていくことです。

食べたくても、体が受けつけないことがあります

ご家族は「食べないから弱ってしまうのでは」と心配されることがあります。もちろん食事は大切ですが、がんや治療の影響で体が弱り、食べたくても食べられない状態になっていることもあります。

食欲不振は、がんそのもの、治療、悪液質、吐き気、便秘、痛み、息苦しさ、口内炎、味覚やにおいの変化、不安、環境の変化など、いくつもの原因が重なって起こります。1

がんや治療の影響

抗がん薬、放射線治療、手術後の変化、がんそのものによって、食欲が落ちたり、食べ物を受けつけにくくなったりします。

体の症状

吐き気、便秘、痛み、息苦しさ、口内炎、飲み込みにくさ、だるさなどがあると、食べること自体が大きな負担になります。

心の状態や環境

不安、落ち込み、周囲の期待、食卓の雰囲気、においなども、食べやすさに影響します。

悪液質という状態

進行したがんでは、通常の栄養サポートだけでは完全には戻りにくい筋肉量の低下を伴う「がん悪液質」が関わることがあります。23

患者さんは「食べられない」と言いにくいことがあります

ご家族が一生懸命用意した食事を前にすると、患者さんは「残して申し訳ない」「食べないと家族を悲しませてしまう」と感じることがあります。

患者さんの中で起きているかもしれないこと

「本当は今は食べたくない」
「でも、せっかく作ってくれたから残しにくい」
「食べられないと言うと、家族が心配してしまう」

▶ 誰が悪い、という話ではありません

患者さんもご家族も、お互いを思いやるからこそ、食事の時間がつらい場面になってしまうことがあります。

「食べさせる」より「食べるつらさを減らす」

目標を「たくさん食べること」だけにすると、患者さんにもご家族にも負担がかかります。食べる量よりも、まずは「楽に口にできるか」「安心して食卓にいられるか」を大切にしてみてください。

声かけの例

「食べられそうなときに、少しだけで大丈夫だよ」
「今日は無理しなくていいよ」
「残しても大丈夫。食べられそうなものがあったら教えてね」

▶ 安心できる言葉が、食べやすさにつながることがあります

責められない、残してもよい、という安心感は、患者さんの罪悪感を軽くします。

今日からできる工夫

栄養や量、規則正しさにこだわりすぎず、食べたいとき、食べられそうなときに、食べたいものを少しだけ口にする考え方が勧められています。吐き気があるときなどは、無理に食べる必要はありません。1

1

一口、数口からでよいと考える

最初から一人前を出すと、見るだけで負担になることがあります。小皿に少量だけ出すと、患者さんが選びやすくなります。4

2

本人に選んでもらう

食べたいもの、食べられそうな時間帯、温度、においの好みは日によって変わります。「何ならいけそう?」と聞いてみてください。4

3

冷たいもの、のどごしのよいものを試す

ゼリー、果物、アイス、スープ、茶わん蒸し、栄養補助食品など、楽に口にできるものを一緒に探します。

4

においと食卓の圧を減らす

温かい料理のにおいがつらいことがあります。換気、冷ました料理、市販品の活用も選択肢です。「食べなきゃ」と感じる雰囲気を減らすこともケアです。4

ご家族も、手をかけすぎなくて大丈夫です

一生懸命作ったものを食べてもらえないと、ご家族も傷ついてしまいます。市販品、冷凍食品、栄養補助食品、簡単に出せるものを使ってください。手をかけた食事だけが愛情ではありません。

「食べる量」ではなく、「安心して過ごせる時間」を支えることも、ご家族にしかできない大切なケアです。

こんなときは、医療者に相談してください

症状を和らげることで、少し食べやすくなることがあります。食べられないことを、患者さんとご家族だけで抱え込む必要はありません。

水分もほとんど取れない、尿が少ない

脱水や電解質異常の評価が必要になることがあります。

吐き気、嘔吐、便秘、痛み、口内炎が強い

薬の調整や症状緩和で、食べる負担が減ることがあります。

むせる、飲み込みにくい

誤嚥のリスクや食形態の調整について相談が必要です。

ご家族がつらくなっている

介護する側の不安や疲れも、相談してよい大切なテーマです。4

最後に

「食べてほしい」と思う気持ちは、患者さんを大切に思う気持ちです。その気持ちを、食事の量ではなく、患者さんが安心して過ごせる時間に変えていく。

食卓は、栄養をとる場所である前に、安心できる場所であってほしいと思います。食べられない日があっても、そばにいること、責めずに見守ること、手を握ることも、大切な支えです。

参考文献

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス. 食欲がない・食欲不振. 2026年6月30日閲覧.
  2. Fearon K, Strasser F, Anker SD, et al. Definition and classification of cancer cachexia: an international consensus. Lancet Oncol. 2011;12(5):489-495.
  3. Roeland EJ, Bohlke K, Baracos VE, et al. Management of Cancer Cachexia: ASCO Guideline. J Clin Oncol. 2020;38(21):2438-2453.
  4. Macmillan Cancer Support. Cancer and eating problems. 2026年6月30日閲覧.
作成日
2026年6月30日
作成
東北医科薬科大学病院 腫瘍内科
注意
このページは一般的な情報提供を目的としています。個別の症状や治療方針については、担当の医療者にご相談ください。