コラム vol.06

大切な人が
がんになったとき

家族としてどう関わるか
― 支える人も、支えられていい ―

CHECK

こんな気持ちになっていませんか?

  • 何と声をかければよいか分からない
  • 自分が不安そうにすると、本人を心配させてしまいそう
  • もっとしてあげられることがあるのではと焦る
  • 自分の不安や疲れを誰にも言えない
  • あとで後悔しないように、できる限りのことをしたい

こうした気持ちは、どれも特別なものではありません。いつも前向きでいる必要も、すべてを家族だけで引き受ける必要もありません。

INTRO

家族も、支援を受ける
大切な存在です

がんの診断や治療は、患者さん本人だけでなく、ご家族の生活や気持ちにも大きな影響を与えます。ご家族には、患者さんを支える立場であると同時に、ご自身も不安や疲れを抱える一人の生活者としての側面があります[1][2]

46.6%
不安を示す回答が
みられた割合
42.3%
抑うつを示す回答が
みられた割合

※ がん患者さんを支える家族等を対象とした系統的レビュー・メタ解析より[3]。複数の国・地域の研究を統合した値で、医師による診断の割合ではありません。調査方法や対象によって結果は異なります。

支える人が、支えられること

家族は、患者さんを支えることを優先し、自分の休息や相談を後回しにしがちです。しかし、介護の負担や心のつらさが大きくなると、家族自身の生活にも影響します。一人で抱え込まず、家族同士で支え合ったり、周囲に助けを求めたりすることが、負担を軽くする助けになる可能性があります[4]

休むことや誰かに相談することは、患者さんのためだけに行うものではありません。ご家族自身の生活と健康も、同じように大切です。

PHASE

状況に応じた
家族の関わり方

必要とされる支え方は、病状や治療の時期、本人と家族の関係によって異なります。ここに挙げるのは一例であり、すべてを行う必要はありません。

診断を聞いた直後

何も言えないときは、無理に言葉を探さなくていい

診断を聞いた直後は、患者さんだけでなく、ご家族も強い衝撃を受けることがあります[1][2]。「何と言えばよいか分からない」と感じるのは自然な反応です。

すぐに励ましたり、結論を出したりしなくてもかまいません。「今はうまく言葉にできないけれど、一緒に考えたい」と伝えるだけでも十分です。沈黙や涙を無理に隠す必要もありません。

治療中の日常

漠然と尋ねるより、具体的に提案する

「何かできることはある?」という問いかけが、患者さんにとって答えを考える負担になることもあります。

「木曜日の受診に一緒に行こうか」「買い物をしてこようか」のように具体的に提案し、断りやすい余地も残すと、受け取ってもらいやすくなります。

一方で、家族の負担と不安・抑うつには関連があることが報告されています[5]。うまく支えられないと感じても、ご自身を責めないでください。

家族自身の心と生活

疲れ切る前に、自分の状態にも目を向ける

眠れない、食欲がない、仕事や家事に集中できない、気持ちが張りつめたまま戻らない――こうした状態が続くときは、ご家族にも支援が必要かもしれません。

患者さんと離れて過ごす時間を持つことや、仕事を続けること、楽しみを保つことは、患者さんへの裏切りではありません。相談支援センターは、ご家族からの相談も受け付けています[6]

医療チームとの連携

本人が望む形で、医療者と情報を共有する

ご家族が気づいた日常生活や症状の変化は、診療に役立つ大切な情報です。「いつもと様子が違う」「自宅では食事がとれていない」など、気になることがあれば、主治医や看護師に伝えてください。

病状や治療について、患者さんが誰とどのように情報を共有したいかを、あらかじめ話し合っておくことも大切です。診察に一緒に参加する、説明を聞いたあとに家族で内容を確認するなど、本人が望む形で情報を共有できると、治療や療養生活について一緒に考えやすくなります。

患者さん本人には話しにくい家族の心配事や、家族だけで医療者に相談したいことがある場合も、遠慮なくお伝えください。医療チームは、患者さんの意向を大切にしながら、ご家族とどのように連携できるかを一緒に考えます[7]

病状が進んだとき・看取りを考えるとき

それぞれの形で、大切な時間を過ごす

病状が進むにつれて、ご家族には悲しみ、不安、戸惑い、怒り、時には安堵など、さまざまな気持ちが生じることがあります。死別前から悲嘆に似た反応が生じることもありますが、その現れ方や経過は人によって異なります[1]

この時期に、どのように過ごすことが本人や家族にとってよいのか、迷うことは少なくありません。できるだけそばにいたいと考える人もいれば、これまでと変わらない日常を大切にしたい人もいます。話しておきたいこと、会いたい人、過ごしたい場所など、大切にしたいことも一人ひとり異なります。

一緒に暮らしている、または近くに住んでいるご家族は、特別なことをしようと気負わなくてもかまいません。同じ部屋で過ごすこと、手を握ること、好きな音楽を聴くこと、普段どおりの話をすることも、大切な時間になります。本人が話したくないときには、無理に会話を続けず、静かにそばにいることも一つの支えです。また、症状や生活の変化に気づいたときは、家族だけで対応しようとせず、医療者に伝えてください。

一方で、子どもの世話や仕事、介護、距離などの事情から、思うように一緒に過ごせないご家族もいます。会える時間の長さだけで、支えの大きさが決まるわけではありません。電話やメッセージで気持ちを伝えること、写真や手紙を届けること、本人がどのように過ごしたいかを確かめることなど、離れていてもできる関わりがあります。必要があれば、その希望を主治医や看護師、身近で支えているご家族と共有することもできます。

すべてを家族だけで担い、完璧に行う必要はありません。患者さんが何を大切にしたいのか、ご家族はどのように関わりたいのかを確かめながら、これからの時間の過ごし方を医療チームと一緒に考えていきましょう。

EXAMPLE

こんなとき、どうする?

以下は、ご家族が抱えやすい悩みを説明するために作成した架空の複合事例です。実在する患者さんやご家族の相談内容を示すものではありません。

架空の例 1

夫が肺がんと診断された。説明の場では気丈に振る舞ったが、家に帰ってから涙が止まらない。夫の前では泣けず、誰にも話せずにいる。

配偶者の立場から

相談できることの例ご家族自身の不安や生活上の困りごとも、相談支援センターで話すことができます。心理的なつらさが強い場合は、主治医や看護師に、院内の専門的な支援について相談することもできます[6][8]
架空の例 2

母が大腸がんの治療中。遠方に住み、仕事もあるため頻繁に帰省できない。電話では「大丈夫」と言うが、本当の状態が分からず、何もできない自分を責めてしまう。

離れて暮らす子どもの立場から

相談できることの例離れていても、定期的に連絡する、本人の希望を確認する、必要な制度や地域の支援を一緒に調べるといった関わり方があります。退院後の生活や介護制度については、相談支援センターで情報を整理できます[6]
架空の例 3

妻の病状が進み、自宅で過ごすことも考えたいが、何を準備すればよいか分からない。医師にいつ、どう尋ねればよいか迷っている。

療養場所を考える配偶者の立場から

相談できることの例まずは「これから過ごす場所について相談したい」と主治医や看護師に伝えてください。相談支援センターでは、退院後の生活や利用できる制度について相談できます[6]。具体的な医療体制は、ご本人の病状や希望に応じて医療チームと検討します。

家族だけで
抱え込まないために

当院では、医師、看護師、薬剤師、リハビリスタッフ、管理栄養士、公認心理師、社会福祉士などがチームとなり、患者さんとご家族を支援しています[8]

ご家族から見た症状や生活の変化も大切な情報です。「こんなことを話してよいのか」と迷う内容でも、まずは主治医や看護師へお伝えください。

病状や治療内容について医療者からご家族へお伝えできる範囲は、ご本人の意向や状況によって異なります。また、利用できる支援は病状や療養環境によって異なるため、個別にご相談ください。

SUPPORT

家族から相談できること

東北医科薬科大学病院の相談支援センター/がん相談支援センターでは、患者さんだけでなく、ご家族からの相談にも医療ソーシャルワーカーが対応しています[6]

家族としてどう支えればよいか

本人との関わり方や、家族が抱えている不安を整理したいとき。

退院後の生活や療養場所

自宅での生活、緩和ケア、利用できる地域の医療・介護サービスについて知りたいとき。

仕事・介護・生活との両立

仕事を続けながら支えられるか、介護保険などの制度を知りたいとき。

i

治療や制度に関する情報

緩和ケア、セカンドオピニオン、医療費や生活費などについて情報を整理したいとき。

支える人も、
支えられていい

一人で抱え込まず、ご相談ください

がん相談支援センターを見る

面談・電話・メールで相談できます。相談は無料です。
受付時間:平日 8:30~17:15(年末年始を除く)

このコラムは一般的な情報を提供するもので、個別の医学的判断に代わるものではありません。症状や治療に関するご質問は、主治医または担当の医療者にご相談ください。

REFERENCES

  1. 1日本サイコオンコロジー学会, 日本がんサポーティブケア学会 編. 遺族ケアガイドライン 2022年版. 金原出版; 2022. 全文
  2. 2日本サイコオンコロジー学会, 日本がんサポーティブケア学会 編. がん患者における気持ちのつらさガイドライン 2024年版. 金原出版; 2024. 学会ページ
  3. 3Geng HM, Chuang DM, Yang F, et al. Prevalence and determinants of depression in caregivers of cancer patients: a systematic review and meta-analysis. Medicine (Baltimore). 2018;97(39):e11863. doi:10.1097/MD.0000000000011863. PubMed
  4. 4Cui P, Yang M, Hu H, et al. The impact of caregiver burden on quality of life in family caregivers of patients with advanced cancer. BMC Public Health. 2024;24:817. doi:10.1186/s12889-024-18321-3. PubMed
  5. 5García-Torres F, Jabłoński MJ, Gómez Solís Á, et al. Caregiver Burden Domains and Their Relationship with Anxiety and Depression in the First Six Months of Cancer Diagnosis. Int J Environ Res Public Health. 2020;17(11):4101. doi:10.3390/ijerph17114101. PubMed
  6. 6東北医科薬科大学病院. 相談支援センター/がん相談支援センター. 2026年7月12日閲覧.
  7. 7東北医科薬科大学病院. 患者さんの権利とお願い. 2026年7月12日閲覧.
  8. 8東北医科薬科大学病院. がん診療について:がん診療支援チーム(緩和ケアチーム). 2026年7月12日閲覧.
文責
腫瘍内科 川村 佳史
協力
東北医科薬科大学病院 がん相談支援センター
公開
2026年7月14日