STOP
コラム vol.07

免疫チェックポイント
阻害薬とは?

まず要点を確認し、必要なところだけ詳しく読めます

はじめに

まず知っておきたい
3つのポイント

全部を一度に読む必要はありません。まずは、次の3つを知っておいてください。

  1. 1
    免疫の「ブレーキ」を弱める薬です

    免疫ががん細胞を攻撃しやすい状態に戻す治療です。

  2. 2
    効く人も、効かない人もいます

    がんの種類、検査結果、治療の場面によって、期待できる効果は変わります。

  3. 3
    副作用の出方が、これまでの抗がん薬と異なります

    単独で使う場合、従来の抗がん剤に多い強い吐き気や脱毛、血球減少は起こりにくい一方、免疫が自分の体の一部に反応して炎症を起こすことがあります。

息苦しさ、頻回の下痢、急に強いだるさ、力が入りにくいなどがあるときは、次の受診日を待たず、治療中の医療機関へご連絡ください。

INTRO

もう少し詳しく知りたい方へ

この先は結論を先に示し、がん種ごとの詳しい条件や数字は、必要なときだけ開ける構成です。

免疫チェックポイント阻害薬は、免疫のはたらきを利用してがんを抑えようとする薬です。「自分の免疫だけでがんを治す薬」ではなく、免疫ががん細胞を攻撃しやすい状態に戻す治療です[1][2]

効果が確認されているがんの種類や治療の場面は限られており、すべての人に同じように効くわけではありません。また、従来の抗がん薬とは異なる種類の副作用が起こることがあります[1]

  • 1
    どのようなしくみの薬で、これまでの抗がん薬と何が違うのか
  • 2
    どのがん・どの場面で、どのような効果が報告されているのか
  • 3
    どんな副作用に気づいたら、いつ相談すればよいのか

このページの立場特定の治療をおすすめするページではありません。判断のための材料を整理することを目的としています。実際にどの治療が適しているかは、担当医とご相談ください。

MECHANISM

免疫チェックポイントとは
「免疫のブレーキ」のこと

免疫にかかっている「ブレーキ」を弱め、免疫ががん細胞を攻撃しやすくする薬です。

わたしたちの体には、異物や異常な細胞を見つけて攻撃する「免疫」のしくみがあります。中心的な役割をするのがT細胞(Tリンパ球)という白血球の一種です[1]。免疫が暴走して自分の体を傷つけないよう、免疫には「ブレーキ」も備わっています。このブレーキの部分を免疫チェックポイントと呼びます。

1

免疫細胞が、がん細胞を見つける

免疫 がん

免疫細胞は、体の中で増えた異常な細胞を見つけて攻撃するはたらきをもっています。

2

がん細胞が、免疫にブレーキをかける

免疫 STOP がん

がん細胞は、免疫のブレーキを押すような信号を出し、攻撃を受けにくい状態をつくることがあります[1]

3

薬が、そのブレーキを弱める

免疫 STOP 抗体薬 がん

免疫チェックポイント阻害薬は、このブレーキがかかるのを防ぐ薬です[1]。薬そのものががん細胞を直接壊すのではなく、免疫がはたらきやすい状態に戻そうとします。

「免疫力を上げる薬」ではありませんつまり、免疫全体を強くして体力や抵抗力を高める薬ではなく、がんが利用している「免疫のブレーキ」を弱める薬です。ブレーキが弱まると、免疫ががんだけでなく自分の体の一部にも反応し、炎症を起こすことがあります。

DIFFERENCE

これまでの抗がん薬とは
はたらき方が違います

単独で使う場合、強い吐き気や脱毛、血球減少は、従来の抗がん薬より起こりにくいのが特徴です。一方で、免疫に関連する副作用に注意が必要です。化学療法と組み合わせる場合は、両方の副作用が起こりえます。

どちらかが一律に優れているわけではありません。作用する仕組みが異なるため、効果の現れ方や副作用の種類も異なります。がんの種類や治療の目的によっては、組み合わせて使います。

細胞障害性抗がん薬
(いわゆる抗がん剤)

増えるのが速い細胞に直接はたらきかけ、がん細胞の増殖を抑えます。

  • 骨髄・消化管・毛根など、正常でもよく増える細胞が影響を受けやすい
  • 吐き気、脱毛、血球減少などが起こりやすい
  • 副作用が起こりやすい時期をある程度予測できる

免疫チェックポイント
阻害薬

がん細胞そのものではなく、免疫にかかったブレーキにはたらきかけます。

  • 単独で使う場合、強い吐き気、脱毛、血球減少は従来の抗がん薬より起こりにくい
  • 一方で、免疫が自分の体の一部に反応し、皮膚、腸、肺、肝臓などに炎症が起こることがある
  • いつ、どの臓器に起こるか予測しにくい[1]

効果が出るまでの時間も、これまでの抗がん薬と異なる場合があります。効き方や治療を続ける期間は、がんの種類・薬・体の状態によって異なりますので、実際の見通しは担当医にご確認ください。

BENEFIT

「効果がある」には
3つの意味があります

治療の効果は、長く病気を抑える・腫瘍を小さくする・再発を減らすの3つに分けて考えます。

臨床試験では、「効く」を次の3つに分けて評価します。それぞれ意味が異なるため、分けて見ることが大切です。

1

より長く、病気を抑える

異なる治療を受けた集団同士を比べて、生存期間や、がんが大きくならずに過ごせる期間が長くなるかを見ます。

2

腫瘍が小さくなる人を増やす

画像検査で腫瘍が一定以上小さくなった人の割合(奏効率)を見ます。腫瘍が小さくなることと、長く生きられることは、必ずしも同じではありません。

3

手術前後の治療で、再発を減らす

手術でがんを取りきったあとに、再発せずに過ごせる期間が長くなるかどうかを見ます。再発が減っても、生存期間の延長が統計的に示されるとは限りません。

この先に出てくる「中央値」の読み方この先のがん種別の試験結果では、「生存期間中央値」という言葉が出てきます。これは、治療開始後、その集団の生存割合が50%になるまでの期間を示します。比べた2つの中央値の差が、そのまま一人ひとりの延命期間になるわけではありません。長く効果が続く方もいれば、早い時期に効果が乏しいと分かる方もいます。

EVIDENCE

当科で扱うがんでの
代表的な結果

確認されている効果は、がんの種類、検査結果、治療の場面によって異なります。数字は治療効果を保証するものではありません。

当科は消化器がんを中心に、頭頸部がん、原発不明がん、希少がんなど、幅広い固形がんの薬物療法を担当しています[3]。ここでは、そのうち国内で承認されており、比較試験などの結果が公表されているものを取り上げます。すべてのがん・すべての場面を網羅したものではありません。

それぞれの数字は、その試験に参加した患者さんの集団での結果です。試験ごとに参加した患者さんも比較の相手も違うため、カード同士を見比べて「どのがんに一番効く」「どの薬が優れている」と判断することはできません。

ご自身のがん、または確認したいがんの項目を開いてください 閉じた状態でも代表的な結果が分かり、開くとグラフと詳しい条件を確認できます。

食道がん(扁平上皮がん)

手術ができない、進行・再発の食道がんの最初の薬物療法

がん細胞のうち、PD-L1という目印を示す細胞が1%以上の方が対象。免疫チェックポイント阻害薬+化学療法と、化学療法のみを比べた国際共同試験[4]

腫瘍が一定以上小さくなった方は、100人あたり約53人(化学療法のみでは約20人)でした[4]

※ この結果がすべての患者さんに当てはまるわけではありません。

試験の条件とグラフを見る対象・治療・比較・詳しい数字を確認できます
対象
治療歴のない、切除不能・進行・再発の食道扁平上皮がんで、がん組織のPD-L1が1%以上の方
治療
ニボルマブ+フルオロウラシル・シスプラチン
比較
フルオロウラシル・シスプラチンのみ
試験名
CheckMate 648(国際共同第III相試験)
数値
奏効率 53% 対 20%。生存期間中央値 15.4か月 対 9.1か月(ハザード比0.54)[4]。追跡期間を29か月まで延ばした報告でも、生存期間の改善は保たれていました[5]
国内
ニボルマブは「根治切除不能な進行・再発の食道癌」に対して国内で承認されています[6]
注意
PD-L1が1%未満の方や、扁平上皮がん以外の食道がんでは、この結果はそのまま当てはまりません。治療の選択肢は組織型や全身状態によって異なります。
食道がん・食道胃接合部がん

手術のあとの再発予防の治療

手術前に化学放射線療法を行い、手術で切除したあとも、取り出した組織にがんが残っていた方が対象。免疫チェックポイント阻害薬とプラセボ(有効成分の入っていない薬)を比べた国際共同試験[7]

再発や死亡が起こるまでの期間の中央値は、22.4か月(プラセボでは11.0か月)でした[7]

※ この結果がすべての患者さんに当てはまるわけではありません。

試験の条件とグラフを見る対象・治療・比較・詳しい数字を確認できます
対象
術前化学放射線療法と手術(R0切除)を受けたあと、病理検査でがんが残っていたステージII/IIIの食道がん・食道胃接合部がんの方
治療
ニボルマブ(最長1年間)
比較
プラセボ
試験名
CheckMate 577(国際共同第III相試験)
数値
無病生存期間中央値 22.4か月 対 11.0か月(ハザード比0.69)。追跡期間中央値24.4か月時点[7]
国内
ニボルマブは「食道癌における術後補助療法」として国内で承認されています[6]
注意
この試験で最初に示されたのは「再発や死亡が起こるまでの期間」の延長です。2025年の最終解析では、全生存期間中央値は51.7か月対35.3か月、5年生存割合は46%対41%でしたが、全体集団では、明確な差があるとは言い切れませんでした(統計学的有意差なし)[8]。再発を遅らせることと、生存期間を延ばすことは同じではないため、担当医と治療の目的を確認しておくことが大切です。
胃がん・食道胃接合部がん

手術ができない、進行・再発の胃がんの最初の薬物療法

HER2陰性で、PD-L1の指標(CPS)が5以上の方の集団での結果。免疫チェックポイント阻害薬+化学療法と、化学療法のみを比べた国際共同試験[9]

5年後に生存していた方は、100人あたり約16人(化学療法のみでは約6人)でした[9]

※ この結果がすべての患者さんに当てはまるわけではありません。

試験の条件とグラフを見る対象・治療・比較・詳しい数字を確認できます
対象
治療歴のない、切除不能・進行・再発の胃がん、食道胃接合部がん、食道腺がんで、HER2陽性ではない方。うちPD-L1 CPS 5以上の集団
治療
ニボルマブ+化学療法(FOLFOXまたはXELOX)
比較
化学療法のみ
試験名
CheckMate 649(国際共同第III相試験)
数値
生存期間中央値 14.4か月 対 11.1か月(ハザード比0.71)。5年生存割合 16% 対 6%。追跡期間は最短60.1か月[9]
国内
ニボルマブは「治癒切除不能な進行・再発の胃癌」に対して国内で承認されています[6]
注意
PD-L1の値が低い方では、免疫チェックポイント阻害薬を追加する効果が小さくなることが報告されています。検査結果をふまえて、担当医と相談してください。この試験では、重い副作用が、免疫チェックポイント阻害薬と化学療法を併用した群で60%、化学療法のみの群で45%に報告されています[9]。これは免疫に関連した副作用だけでなく、併用した化学療法などによる副作用も含む数字です。
胃がん・食道胃接合部がん

手術の前後に行う薬物療法

臨床病期II〜IVAの、手術が可能な胃腺がん・食道胃接合部腺がんが対象。デュルバルマブ+FLOT療法(D-FLOT)と、FLOT療法のみを比べた国際共同試験です[10]

2年後まで、再発・病気の進行・死亡のいずれもなく経過した方は、100人あたり約67人(FLOT療法のみでは約59人)でした[10]

※ 手術が可能なすべての胃がんに一律に行う治療ではありません。病期、体力、臓器機能などをふまえて検討します。

試験の条件とグラフを見る対象・治療・比較・詳しい数字を確認できます
対象
臨床病期II〜IVAの、手術が可能な胃腺がんまたは食道胃接合部腺がんで、全身状態が保たれている方(948人)
治療
手術前と手術後にデュルバルマブ+FLOT療法を行い、その後デュルバルマブを単独で継続
比較
手術前と手術後のFLOT療法のみ
試験名
MATTERHORN(国際共同第III相試験)
数値
2年無イベント生存割合 67.4% 対 58.5%(ハザード比0.71)。手術で取り出した組織に、がん細胞が残っていなかった方は19.2% 対 7.2%でした[10]
国内
デュルバルマブは、2026年6月に「胃癌における術前・術後補助療法」として国内で承認されました。食道胃接合部腺がんも対象となり得ます[11]
副作用
治療中にみられた重い有害事象は71.6% 対 71.2%で、両群でほぼ同程度でした。手術が遅れた方の割合も10.1% 対 10.8%でした[10]。ただし、FLOT療法自体が負担の大きい治療であり、体力や臓器機能を十分に確認して行います。
注意
現時点で明確に示されているのは、再発などの出来事を減らす効果と、手術標本でがんが見つからない方が増えたことです。生存期間を延ばす効果については、現時点ではまだはっきりした結論に至っていません[10]
大腸がん(MSI-High/dMMR)

MSI-Highという性質が確認された、進行・再発大腸がんの最初の薬物療法

MSI-High(またはdMMR)という、遺伝子の修復のしくみに特徴があるタイプに限った試験です。大腸がん全体のうち一部の方が該当します。免疫チェックポイント阻害薬のみと、化学療法を比べた国際共同試験[12][13]

5年後に生存していた方は、100人あたり約55人(化学療法では約44人)でした[13]

※ この結果がすべての患者さんに当てはまるわけではありません。MSI-Highではない大腸がんには当てはまりません。

試験の条件とグラフを見る対象・治療・比較・詳しい数字を確認できます
対象
治療歴のない、治癒切除不能な進行・再発の大腸がんで、MSI-Highまたはミスマッチ修復機構欠損(dMMR)が確認された方(307人)
治療
ペムブロリズマブ単剤
比較
化学療法(±ベバシズマブまたはセツキシマブ)
試験名
KEYNOTE-177(国際共同第III相試験)
数値
無増悪生存期間中央値 16.5か月 対 8.2か月(ハザード比0.60)[12][13]。5年生存割合 54.8% 対 44.2%、生存期間中央値 77.5か月 対 36.7か月(ハザード比0.73)[13]。奏効率は45.8% 対 33.1%で、統計学的に有意な差ではありませんでした[13]
国内
ペムブロリズマブは「治癒切除不能な進行・再発のMSI-Highを有する結腸・直腸癌」に対して国内で承認されています[14]
注意
この試験では、化学療法を受けた方の62%が、その後に免疫チェックポイント阻害薬を受けています。そのため両群の生存期間の差は、最初から免疫チェックポイント阻害薬を使うことの効果として解釈する必要があります[13]。また、この治療を検討するには、MSI検査などでMSI-High/dMMRであることを確かめる必要があります。
頭頸部がん(扁平上皮がん)

再発または遠隔転移がある頭頸部がんの最初の薬物療法

PD-L1の指標(CPS)が1以上の方の集団での結果。免疫チェックポイント阻害薬のみと、それまでの標準治療(セツキシマブ+化学療法)を比べた国際共同試験[15]

2年後に生きていた方は、100人あたり約30人(それまでの標準治療では約19人)でした[15]

※ この結果がすべての患者さんに当てはまるわけではありません。

試験の条件とグラフを見る対象・治療・比較・詳しい数字を確認できます
対象
再発・転移のある頭頸部扁平上皮がんで、再発・転移に対する薬物療法をまだ受けていない方。うちPD-L1 CPS 1以上の集団
治療
ペムブロリズマブ単剤
比較
セツキシマブ+プラチナ製剤+フルオロウラシル
試験名
KEYNOTE-048(国際共同第III相試験)
数値
生存期間中央値 12.3か月 対 10.3か月(ハザード比0.78)、2年生存割合 30.2% 対 18.6%[15]。5年追跡の報告では、全体集団の5年生存割合はペムブロリズマブ14.4%、比較群6.5%でした[16]
国内
ペムブロリズマブは「再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌」に対して国内で承認されています[14]
注意
試験の対象は口腔、中咽頭、下咽頭、喉頭のがんで、鼻・副鼻腔、鼻咽頭、唾液腺などは含まれていません。また、PD-L1 CPSが1未満の方についての追加解析では、ペムブロリズマブ単剤の成績は比較群を上回っていませんでした[17]
MSI-High/dMMRの固形がん(大腸がんを除く)

標準治療後に増悪した、MSI-High/dMMRの固形がん

がんのできた臓器ではなく、MSI-High/dMMRという性質に注目して行われた試験です。比較する治療群のない単群試験のため、「化学療法と比べてどうか」は分かりません[18][19]

腫瘍が一定以上小さくなった方は、100人あたり約34人でした[19]

※ 比較対照のない試験の結果です。この結果がすべての患者さんに当てはまるわけではありません。

試験の条件とグラフを見る対象・治療・比較・詳しい数字を確認できます
対象
すでに治療を受けた、進行・転移のあるMSI-High/dMMRの固形がん(大腸がんを除く)の方。子宮体がん、胃がん、胆道がんなど多くの種類が含まれます
治療
ペムブロリズマブ単剤
比較
なし(単群試験)
試験名
KEYNOTE-158 コホートK(国際共同第II相試験)
数値
最初の報告(233人)で奏効率34.3%[18]。約4.5年追跡した更新報告(373人)で奏効率33.8%、生存期間中央値19.8か月、効果が続いた期間の中央値63.2か月[19]
国内
ペムブロリズマブは「がん化学療法後に増悪した進行・再発のMSI-Highを有する固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)」に対して国内で承認されています[14]
注意
比較対照のない試験のため、生存期間が延びるかどうかは、この試験だけでは判断できません。適応となるかどうかは、MSI検査の結果と、ほかに使える標準治療があるかどうかによります。
原発不明がん

化学療法を受けたあとの原発不明がん

がんが最初にできた場所(原発巣)を特定できないがんを対象に、日本で行われた単群試験です。比較する対照群はありません[20]

腫瘍が一定以上小さくなった方は、100人あたり約22人でした[20]

※ 比較対照のない試験の結果です。この結果がすべての患者さんに当てはまるわけではありません。

試験の条件とグラフを見る対象・治療・比較・詳しい数字を確認できます
対象
1つ以上の全身化学療法を受けたことがある原発不明がんの方(45人)
治療
ニボルマブ単剤
比較
なし(単群試験)
試験名
NivoCUP(国内第II相試験)
数値
奏効率22.2%、無増悪生存期間中央値4.0か月、生存期間中央値15.9か月[20]
国内
ニボルマブは「原発不明癌」に対して国内で承認されています[6]
注意
参加人数が少なく、比較対照もありません。原発不明がんでは、まず可能な範囲で原発巣の検索と、治療方針に結びつく検査を行うことが優先されます。

LIMITATION

誰にでも同じように
効くわけではありません

同じ薬でも、がんの種類、バイオマーカー、病期、体力や臓器の状態によって、期待できる効果は変わります。

効果が変わる条件を確認するPD-L1、MSI-High、治療の場面、体の状態など

同じ「免疫チェックポイント阻害薬」でも、次のような条件によって、期待できる効果は大きく変わります。十分な効果が得られない方もいます。

  • がんの種類と組織のタイプ同じ臓器のがんでも、組織のタイプによって結果が異なることがあります。
  • バイオマーカーPD-L1の値、MSI-High/dMMR、腫瘍遺伝子変異量などの検査結果によって、対象になるかどうか、効果の見込みが変わります[2]
  • 病期と治療の場面手術ができない進行・再発の場面と、手術前後の場面では、目的も期待できることも違います。
  • これまでの治療歴何番目の治療として使うかによって、示されている根拠が異なります。
  • 全身状態と臓器の機能体力、肝臓・腎臓のはたらき、もともとの持病(特に自己免疫の病気)によって、使用できるかどうかに影響します。

バイオマーカーによっては、従来治療を上回らないこともありますたとえば頭頸部がんの試験では、PD-L1 CPSが1未満の方についての追加解析で、免疫チェックポイント阻害薬のみの成績が、それまでの標準治療を上回りませんでした[17]。「免疫の薬だから、従来治療より必ず優れている」とは限りません。

SAFETY

副作用は、なぜ
起こるのでしょうか

免疫が自分の体の一部にも反応し、肺、腸、皮膚など、さまざまな場所に副作用が出ることがあります。治療終了後に現れることもあります。

免疫のブレーキが弱まると、免疫ががん細胞だけでなく、自分の体の一部にも反応して炎症を起こすことがあります。これが、この薬に特徴的な副作用(免疫に関連した副作用)です[1][2]

  • 1
    ほぼ全身のどの臓器にも起こる可能性があり、どこに起こるかを前もって予測することはできません[1]
  • 2
    治療を始めて間もない時期だけでなく、しばらく経ってから、また治療が終わったあとに現れることもあります。
  • 3
    起こりやすさや重さは、薬の種類、他の薬との併用、がんの種類によって異なります。たとえば胃がんの試験では、重い副作用が、免疫チェックポイント阻害薬と化学療法を併用した群で60%、化学療法のみの群で45%に報告されました[9]。この数字には、免疫に関連した副作用だけでなく、併用した化学療法などによる副作用も含まれます。
  • 4
    早く気づいて対応することは重症化を防ぐうえで重要です。一方で、まれに急速に悪化し、命に関わることもあります。だからこそ、症状を自己判断せず、治療を受けている医療機関へ早めに連絡することが大切です[1]

副作用が必ず起こるわけではありません。免疫チェックポイント阻害薬を単独で使う場合、従来の抗がん薬に多い強い吐き気、脱毛、血球減少は起こりにくいのが特徴です。一方で、免疫に関連する副作用は、早めに気づいて対応することが大切です。化学療法と併用する場合は、化学療法による副作用も起こりえます。

SYMPTOMS

早めに伝えてほしい
症状の目安

息苦しさ、頻回の下痢、強いだるさ、しびれや力の入りにくさなど、いつもと違う症状が手がかりになります。

以下は、主な副作用と、気づく手がかりとなる症状の例です[2]。ご自身で診断するためのものではなく、「気づいたら伝える」ための手がかりとしてお使いください。ここに書かれていない症状でも、いつもと違うと感じたらお知らせください。

息・胸の症状

息切れ、から咳、発熱、胸の痛み、動悸、息苦しさ

おなかの症状

下痢の回数が増える、腹痛、血便、食欲が落ちる、皮膚や白目が黄色くなる

強いだるさ・体調の変化

強いだるさ、立ちくらみ、寒がり・暑がり、体重の変化、のどの渇き、尿の増加

神経・筋肉の症状

手足のしびれ、力が入らない、ものが二重に見える、まぶたが下がる

皮膚・口の症状

発疹、かゆみ、水ぶくれ、口内炎

尿・むくみ

尿が減る、急に体がむくむ

出血・貧血を疑う症状

あざができやすい、出血が止まりにくい、息切れやふらつきなどの貧血症状

「これくらいで連絡してよいのか」と迷ったときは迷った時点で、連絡していただいて大丈夫です。軽く見えても、早く分かったほうが対応しやすい症状があります。自己判断で様子を見続けることは避けてください。

URGENT

できるだけ早く
ご連絡ください

次のような症状があるときは、時間帯にかかわらずご連絡ください

これらは、早めの対応が必要なことがある症状です[2]。原因が免疫の副作用かどうかは、診察や検査をしてはじめて分かります。まずは症状をそのまま伝えてください。

  • 息が苦しい、少し動いただけで息切れがする
  • 下痢の回数がはっきり増えた、水のような下痢が続く、血便が出る
  • 意識がぼんやりする、話がかみ合わない、反応が鈍いと周囲に言われる
  • 急に強いだるさが出て、起き上がれない
  • 胸が痛い、動悸がする
  • 手足に力が入らない、まぶたが下がる、ものが二重に見える
  • 目に見えて尿が減った、急に体がむくんだ

ご連絡先(当科で治療中の方)

東北医科薬科大学病院 代表:022-259-1221
平日 8:30〜17:15:「腫瘍内科外来」へおつなぎください
上記以外の時間:「救急外来」へおつなぎください[21]

お電話では、①お名前 ②診察券のID ③診療科名(腫瘍内科) ④現在受けている治療内容・お薬の名前 ⑤困っている症状(いつから、どのような症状か)をお伝えください[21]

患者さんへのページで、連絡方法をくわしく見る

RESPONSE

副作用が疑われたとき、
どうするのか

副作用が疑われたら、診察や検査で原因を確認し、必要に応じて治療の一時休止やステロイド治療などを行います。

症状を伺ったあと、原因を確かめながら、必要な対応を一緒に決めていきます。以下は一般的な流れです。実際の対応は症状や重さによって異なります[2]

  1. 診察、血液検査、必要に応じて画像検査などを行い、免疫に関連した副作用かどうか、ほかの原因(感染症など)ではないかを確かめます。
  2. 症状の程度によっては、免疫チェックポイント阻害薬を一時的にお休みすることがあります。
  3. 免疫のはたらきすぎを抑えるため、ステロイドなどの薬を使うことがあります。
  4. ホルモンが不足した場合は、補充療法を続けることがあります。
  5. 治療を再開できるかどうかは、副作用の種類と重さによって異なります。再開しない場合もあります。

ご自身の判断で薬をやめないでください副作用が疑われても、次回の投与を勝手に見送ったり、処方された薬を自己判断で中止したりすることは避けてください。特にステロイドは、急にやめると体調が大きく崩れることがあります。減らし方や中止の時期は、必ず医療者と決めてください。

CLARIFY

「免疫細胞療法」とは
同じものですか?

免疫チェックポイント阻害薬と、自由診療で提供されることのある「免疫細胞療法」は同じ治療ではありません

免疫細胞療法との違いを確認する標準治療・治験・自由診療の違いと、確認したい8項目

同じではありません。「免疫療法」という言葉は幅広く使われていて、その中身は大きく異なります。国立がん研究センターの解説では、効果や安全性が十分に確認されているものと、まだ確認途中のものを区別して考えることがすすめられています[1][22]。ここでは3つに分けて整理します。

A

標準治療として位置づけられているもの

比較試験などで効果と安全性が確かめられ、国内で薬事承認され、保険診療で受けられるものです。免疫チェックポイント阻害薬がこれにあたります[1]。ただし、薬ごとに対象となるがんの種類や条件が決められており、どのがんにも使えるわけではありません。

国内で承認されているCAR-T細胞療法は、主に白血病・リンパ腫・多発性骨髄腫などの血液がんが対象です。本コラムで扱っている固形がんの標準治療とは別の治療であり、血液がんで確立している治療が、そのまま固形がんにも当てはまるわけではありません。

B

臨床試験・治験で評価中のもの

効果や安全性を確かめるために、計画に沿って行われている研究段階の医療です[1][22]。参加には条件があり、試験の内容や参加者の募集状況は公開されています。担当医に、対象となる試験があるかどうか相談できます。

樹状細胞、NK細胞、TIL(腫瘍浸潤リンパ球)などを用いた治療は、がんの種類ごとに開発の段階が異なります。研究として行われているのか、すでに承認された治療なのかを、名称だけで判断することはできません。

C

効果を判断するための比較試験が十分でないもの

自由診療として提供されている免疫療法の多くは、標準治療と比べた試験の結果が公表されておらず、効果や安全性が確かめられた段階には至っていません[1][22]。費用は全額自己負担になります。

これは「効果がない」と決めつけるものでも、特定の施設を批判するものでもありません。ただ、判断の材料が少ない状態であることは、知っておいていただきたい点です。検討する場合は、必ず担当医にもお話しください[1]

「免疫療法」という言葉だけで判断せず、8つの確認ポイントを見てみましょう

保険診療か自由診療かという分け方だけで、治療の良し悪しが決まるわけではありません。治療を検討するときは、どのがんを対象にしているのか、どのような効果と副作用が報告されているのか、緊急時にどこで対応してもらえるのかを確認することが大切です。

  1. 日本で薬事承認されている治療ですか(承認されていない場合、それはどの段階の治療ですか)
  2. 自分のがんの種類・組織のタイプ・病期が、その治療の対象に含まれていますか
  3. 標準治療と比べた試験がありますか。ない場合、何をもとに効果を判断していますか
  4. 治療成績が、査読を受けた論文として公開されていますか
  5. 臨床試験であれば、登録情報(対象、方法、実施施設)が公開されていますか
  6. 費用の総額と、追加でかかりうる費用が、書面で説明されていますか
  7. 副作用が起きたときや緊急時に、誰がどこで対応する体制になっていますか
  8. その治療を受けることで、標準治療を受ける機会や時期を失うことはありませんか

迷ったときは、まず担当医に相談してください。担当医に直接言いにくい場合は、診療に関わる看護師や薬剤師を通じて相談したり、別の医療機関でセカンドオピニオンを受けたりする方法があります。

このページのまとめ

  1. 免疫チェックポイント阻害薬は、限られたがん・治療場面で、治療成績の改善が確かめられています。
  2. 効果には個人差が大きく、がんの種類、バイオマーカー、病期、全身状態によって期待できることが変わります。
  3. 従来の抗がん薬とは異なる、免疫に関連した副作用が起こることがあります。
  4. 気になる症状は、軽く見えても早めに医療者へ伝えてください。自己判断で薬をやめないでください。
  5. 「免疫療法」という名称だけで判断せず、対象となるがん、承認状況、比較試験、安全管理の体制を確かめてください。
どの治療が適しているかは、病期、全身状態、臓器の機能、バイオマーカー、これまでの治療、併用する薬などによって一人ひとり異なります。このページの内容は、担当医との相談に代わるものではありません。

その治療は、どのがんに使うもの?
効果と副作用は、どこまで分かっている?

気になることは、
遠慮なくご相談ください

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このコラムは一般的な情報を提供するもので、個別の診断や治療方針を示すものではありません。ご自身の治療については、主治医または担当の医療スタッフにご相談ください。掲載しているデータは、それぞれの臨床試験に参加した患者さんの集団における結果であり、治療効果を保証するものではありません。

参考文献を見る(22件)このページで用いたガイドライン・論文・公的情報

REFERENCES(情報確認日:2026年7月27日)

  1. 1国立がん研究センター がん情報サービス.「免疫療法」(更新・確認日 2025年11月6日). 外部サイト
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  3. 3東北医科薬科大学病院 腫瘍内科.「医療機関の方へ」. 当サイト内
  4. 4Doki Y, et al. Nivolumab Combination Therapy in Advanced Esophageal Squamous-Cell Carcinoma(CheckMate 648). N Engl J Med. 2022;386(5):449-462. doi:10.1056/NEJMoa2111380
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  21. 21東北医科薬科大学病院 腫瘍内科.「患者さんへ」. 当サイト内
  22. 22国立がん研究センター がん情報サービス.「免疫療法 もっと詳しく」. 外部サイト
文責
腫瘍内科 川村 佳史
情報確認日
2026年7月27日
公開
2026年7月28日