患者さん・ご家族へ

腫瘍マーカーが上がったら、
がんが進んだ?

CEA、CA19-9、SCC、NSE、ProGRP……。
検査結果の数字だけで、一人で結論を出さないために。

まず知っておいてほしいこと

腫瘍マーカーは大切な手掛かりですが、がんの大きさをそのまま表示する数字ではありません。

高い=進行・再発
とは限りません

がん以外の病気や体の状態でも変化します。

正常=がんがない
とも限りません

がんがあっても上がらない人がいます。

一度の値より
推移を見ます

画像、症状、ほかの検査と合わせて判断します。

腫瘍マーカーの数値だけで、患者さんご自身が進行や再発を判断する必要はありません。値の意味は、診察や画像検査などを含めて医療者が総合的に判断します。

腫瘍マーカーとは何ですか?

腫瘍マーカーとは、がん細胞がつくる物質や、がんに反応した体の細胞がつくる物質などを測定し、診断や治療の参考にする検査です。多くは血液で測りますが、尿などを調べるものもあります。12

同じ種類のがんでも、マーカーをよくつくる人と、ほとんどつくらない人がいます。反対に、正常な細胞も同じ物質をつくることがあるため、がんがなくても値が上がることがあります。

数値には、がん以外の要因も重なります

がん細胞や
体の反応がつくる物質
炎症・臓器機能・
生活習慣など
血液検査の
腫瘍マーカー値

腫瘍マーカーの種類によって、影響を受ける要因は異なります。

炎症・感染肝炎、膵炎、胆管炎など
胆汁の流れ胆管が詰まった状態など
肝臓・腎臓の機能分解や排泄の変化
生活習慣喫煙、飲酒など
体の自然な変化加齢、妊娠、月経など
薬・採血時の影響薬剤、溶血、測定法など

これらは代表例です。すべてのマーカーに同じ要因が当てはまるわけではありません。加齢、妊娠、月経、飲酒、喫煙、薬の成分なども値に影響することがあります。1

何のために測るのでしょうか?

主な目的は、治療の効果や治療後の経過を確かめることです。例えば、治療前に高かった値が下がれば、治療が効いている可能性を考えます。治療後に再び上がってきたときは、再発がないかを確認する手掛かりになります。

がんの診断の参考にすることもあります。ただし、腫瘍マーカーだけでは、がんがあるか、どのがんなのかは決められません。画像検査や、必要に応じて採取した組織を調べる病理検査と合わせて判断します。

上がったときは、ほかの検査と合わせて確認します

一度の値だけでなく、前回までと比べて上昇が続いているかを見ます。CTなどの画像や症状にも変化があるか、炎症や肝臓・腎臓の働きなど、がん以外の原因で上がっていないかも確認します。数値の変化と病気の変化は、必ずしも一致しないためです。

短期間に明らかな上昇が続くとき 同じ検査法で明らかな上昇が複数回続く場合は、症状やほかの検査結果も確認したうえで、予定を待たずCTなどの画像検査を検討することがあります。上昇したことだけで、進行や再発と判断するわけではありません。
がん検診として使える検査は限られます。
多くの腫瘍マーカーは、症状のない方のがん検診には向きません。慢性の肝臓病がある方の肝がんの定期検査などの例外はありますが、多種類を一度に測っても、早期のがんを見つけたり、がんがないと確かめたりできる検査ではありません。なお、前立腺がんのPSA検査は利益と不利益の両面があり、受けるかどうかは医師と相談して決めることが勧められています。12

がんの種類ごとの主な腫瘍マーカー

ご自身のがんの種類を選んでください。CEAやCA19-9など、腫瘍マーカー名のボタンでも絞り込めます。

ここに挙げるのは主な例で、すべてのがん・検査を網羅した一覧ではありません。腎細胞がんなど、診断や治療効果判定に使える特定の血清腫瘍マーカーが確立していないがんもあります。採血項目に腫瘍マーカーがないことが、検査不足を意味するとは限りません。14

がんの種類・腫瘍マーカーから探す

がんの種類を選ぶ

腫瘍マーカー名で絞り込む

食道がんSCCCEACYFRA

食道がんではSCCやCEAを測定し、状況によってCYFRAなども参考にします。1

主な使い方

治療前の基準値を確認し、薬物療法や放射線治療の効果、治療後の経過を見る手掛かりにします。

注意点

SCCは腎機能低下、皮膚疾患、採血時の唾液や汗の混入などでも上昇することがあります。正常でも食道がんを否定できません。

胃がんCEACA19-9

胃がんではCEAやCA19-9が、手術後の経過観察や薬物療法の効果判定の参考に使われることがあります。3

主な使い方

治療前に高かった患者さんでは、その後の上がり下がりが病勢を考える材料になります。

注意点

早期を含め、胃がんがあっても両方とも正常なことがあります。診断の中心は内視鏡と病理検査です。

大腸がん(結腸・直腸がん)CEACA19-9

大腸がんではCEAとCA19-9を測定します。特にCEAは、治療効果や手術後の経過を見る際によく使われます。4

主な使い方

治療前からの推移を、CTなどの画像検査と合わせて確認します。

注意点

CEAは喫煙、炎症、肝臓や胆道の病気などでも上昇し得ます。一度の軽い上昇だけで再発とは判断しません。

膵がん・胆道がんCA19-9CEASPan-1DUPAN-2

膵がん・胆道がんではCA19-9とCEAが主に使われます。膵がんではSPan-1、DUPAN-2などを測定することもあります。56

主な使い方

診断の補助や治療効果の確認に使います。治療前後を同じ条件で比べることが大切です。

特に重要な注意点

CA19-9は、がんが増えていなくても黄疸、胆管炎、胆汁の流れの悪化で大きく上がることがあります。また、体質的にCA19-9をほとんどつくらない人もいます。16

肝細胞がんAFPPIVKA-IIAFP-L3分画

肝細胞がんではAFP、PIVKA-II、AFP-L3分画を、超音波やCT・MRIと組み合わせて使います。7

主な使い方

慢性肝疾患がある方の定期検査、診断の補助、治療効果や再発の確認に使います。

注意点

AFPは慢性肝炎・肝硬変などでも上がります。PIVKA-IIはビタミンK不足やワルファリンなどの影響を受けます。

肺がんCEACYFRASCCProGRPNSE

肺がんでは組織型などに応じて、CEA、CYFRA、SCC、ProGRP、NSEなどを測定します。8

主な使い方

CEAやCYFRAは非小細胞肺がん、ProGRPとNSEは小細胞肺がんで参考にすることが多く、治療中の推移を見ます。

注意点

ProGRPは腎機能低下、NSEは採血時の溶血でも上がり得ます。マーカーから組織型を確定することはできません。

乳がんCA15-3CEA

乳がんではCEAやCA15-3を測定することがありますが、乳がんを見つける検診や早期診断の代わりにはなりません。9

主な使い方

主に再発・転移した乳がんで、治療効果や病勢を見る参考情報として使います。

注意点

正常でも再発・転移を否定できず、上昇だけで治療を変更するものでもありません。

婦人科がんCA125SCCCEA

卵巣・卵管・腹膜がんではCA125、子宮頸がんではSCC、CA125、CEAなどを測定します。1011

主な使い方

診断の補助、治療効果、治療後の経過を見るために、画像や病理検査と合わせて使います。

注意点

CA125は月経、妊娠、子宮内膜症、腹膜や胸膜の炎症、がん以外の腹水などでも上昇します。

前立腺がんPSA

PSAは前立腺でつくられるタンパク質で、前立腺がんの診断補助、治療効果、再発の確認に広く使われます。12

主な使い方

年齢、診察、MRIなどと合わせて診断を考え、治療後はPSAの推移を詳しく追います。

注意点

前立腺肥大症、前立腺炎、尿閉、前立腺への処置などでも上昇します。基準値以下でもがんが見つかることがあります。

胚細胞腫瘍AFPβ-hCGLDH

胚細胞腫瘍ではAFP、β-hCG、LDHが、診断、病期・予後の評価、治療効果判定に重要です。多くの固形がんより、腫瘍マーカーが診療に直接結びつきやすい病気です。13

主な使い方

治療開始前から定期的に測定し、低下する速度も含めて評価します。

注意点

AFPは肝疾患、LDHは炎症や組織障害、溶血などでも上がる非特異的な指標です。純粋なセミノーマでは、腫瘍に由来するAFP上昇はみられません。β-hCGは、純粋なセミノーマでも軽く上昇することがあります。

神経内分泌癌(NEC)NSEProGRP

神経内分泌癌(NEC)ではNSEとProGRPを測定することがあります。小細胞肺がんでも、この2つを治療前後の参考にします。いずれも全員で上がるわけではありません。15

主な使い方

治療前にNSEまたはProGRPが高かった場合、薬物療法の効果や病勢を追う参考にします。

注意点

NSEは溶血、ProGRPは腎機能低下の影響を受けます。診断の中心は病理組織で、マーカーだけでNECとは診断できません。

この項目は神経内分泌癌(NEC)についての説明です。神経内分泌腫瘍(NET)のホルモン検査は、病気の性質や症状によって大きく異なるため、本コラムでは扱っていません。

原発不明がん状況に応じて選択

原発不明がんでは、CEAやCA19-9を含む多くの腫瘍マーカーが複数のがんで上昇するため、マーカーを手当たり次第に測っても原発臓器を特定できないことがあります。1718

選んで測る場面

男性で骨転移が目立つ場合のPSA、若い男性や正中部病変でのAFP・β-hCG、女性で腹膜病変が主体の場合のCA125、病理で神経内分泌癌が疑われる場合のNSE・ProGRPなどは、診断と治療に結びつく病気を考える手掛かりになります。

大切な考え方

病理組織、病変の分布、年齢・性別、画像所見から疑う病気を絞り、その疑いに応じて検査を選びます。

原発が特定できなくても、治療前から高かったマーカーは、その後の治療効果を追う「その患者さんの目印」として使える場合があります。

該当する項目がありません。「すべて表示」を選んで一覧に戻ってください。

がん以外で上がる代表的な例

同じ要因がすべての患者さんに当てはまるわけではありません。値を解釈するときに医療者が確認する、代表的な組み合わせです。

マーカーよく使うがんの例がん以外の上昇要因・注意点の例
CEA大腸、胃、肺、乳腺など喫煙、炎症、肝疾患、胆汁の流れの悪化など
CA19-9膵、胆道、胃、大腸など胆管炎、胆道閉塞、膵炎など。体質的にほとんどつくらない人もいる
SCC食道、子宮頸部、肺の扁平上皮癌など腎機能低下、皮膚疾患、採血時の唾液や汗の混入など
AFP肝細胞がん、胚細胞腫瘍慢性肝炎、肝硬変、妊娠など
PIVKA-II肝細胞がんビタミンK不足、ワルファリンなどのビタミンK拮抗薬
CA125卵巣・卵管・腹膜がんなど月経、妊娠、子宮内膜症、腹膜・胸膜の炎症、腹水など
PSA前立腺がん前立腺肥大症、前立腺炎、尿閉、前立腺への処置など
NSE小細胞肺がん、神経内分泌癌など採血した血液の溶血など
ProGRP小細胞肺がんなど腎機能低下など

スマートフォンでは表を横に動かせます。

「その人のがん」を目印にするctDNA検査

従来の腫瘍マーカーは、同じがん種の患者さんに共通する物質を測る仕組みです。簡便で役立つ一方、腎細胞がんなど日常診療で使える血清マーカーが確立していないがんや、代表的なマーカーをほとんどつくらない患者さんもいます。14

そこで、がん細胞から血液中に放出されたDNA(ctDNA)を使い、腫瘍組織にある患者さん固有の遺伝子変異を追跡する検査が開発されています。「このがんに共通の目印」ではなく、「この人のがんにある目印」を選ぶ方法です。

がん組織から
その人の変異を探す
追跡する変異を
選ぶ
採血でctDNAの
変化を追う
国内で薬事承認(2026年6月)・販売開始前

Signatera(シグナテラ)

Signateraは、患者さんのがん組織から見つけた遺伝子変異を、採血で追跡する検査です。手術後に画像では見えない小さながんが残っている可能性(分子学的残存病変:MRD)や、再発のリスクを調べます。20

日本では、大腸がんを対象に承認されています。手術で取り切ったステージⅡ・Ⅲでは、術後の抗がん薬治療が必要かを考える補助として使います。再発リスクの評価は、すべてのステージが対象です。ステージⅡのうち、病理検査で再発リスクが明らかに低いと判断される場合は、この検査を使わなくても抗がん薬治療が不要と判断できることがあります。22保険適用を経て販売が始まる予定です。23当院での導入は現在検討中です。

結果だけで治療を決める検査ではありません。
陰性でも、小さながんが残っている可能性は否定できません。繰り返し測る間隔や期間、繰り返した検査の結果に合わせて治療を変えることで治療成績がよくなるかは、まだ十分に分かっていません。22

保険適用や費用、受けられる時期は、販売開始後に主治医にご確認ください。

他施設の自由診療

岩手医科大学のOTS-アッセイ

岩手医科大学附属病院では、同大学の研究をもとに確立されたデジタルPCRによるctDNA測定(OTS-アッセイ)が、公的医療保険の対象とならない自由診療として行われています。受けるには主治医からの紹介状や病理検体の準備が必要です。有効性の検証はまだ限られており、当院では現在実施していません。1921

知っておきたい限界
有用な情報が得られない場合や、がんがあってもctDNAを検出できない場合があります。検出されなかったことだけで「再発がない」と断定することはできません。また、OTS-アッセイは体内の腫瘍量を追跡する目的の検査で、新しい薬を提案する検査ではありません。

よくある質問

少しだけ基準値を超えました。再発でしょうか?

一度の軽い上昇だけでは判断できません。前回までの推移、炎症や臓器機能、検査方法の違いなどを確認し、必要に応じて再検査や画像検査を行います。

腫瘍マーカーが正常なら、がんは大丈夫ですか?

正常でも、がんがないとは言い切れません。がんがあってもマーカーをつくらない患者さんや、病変が小さいため上がらない患者さんがいます。

マーカーが上がったら、すぐに治療を変えますか?

通常はマーカーだけで治療を変更しません。上昇が続くか、画像や症状にも変化があるか、治療の目的や選択肢は何かを総合して考えます。

たくさんの種類を測ったほうが安心ですか?

必要のない検査を増やすと、がんと関係のない軽い上昇が見つかり、かえって不安や追加検査につながることがあります。がんの種類と検査目的に応じて選ぶことが大切です。

数字は、答えではなく手掛かりです

腫瘍マーカーの変化は、注意深く確認すべき大切な情報です。しかし、一つの数字だけで進行や再発が決まるわけではありません。これまでの推移、画像検査、症状、ほかの血液検査を医療者と一緒に整理していきましょう。

参考資料

患者さん・ご家族向け

  1. 国立がん研究センター がん情報サービス「腫瘍マーカー検査とは」
  2. National Cancer Institute. Tumor Markers.
  3. 国立がん研究センター がん情報サービス「胃がん 検査」
  4. 国立がん研究センター がん情報サービス「大腸がん 検査」
  5. 国立がん研究センター がん情報サービス「膵臓がん 検査」
  6. 国立がん研究センター がん情報サービス「胆道がん 検査」
  7. 国立がん研究センター がん情報サービス「肝臓がん(肝細胞がん) 検査」
  8. 国立がん研究センター がん情報サービス「肺がん 検査」
  9. 国立がん研究センター がん情報サービス「乳がん 検査」
  10. 国立がん研究センター がん情報サービス「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん 検査」
  11. 国立がん研究センター がん情報サービス「子宮頸がん 検査」
  12. 国立がん研究センター がん情報サービス「前立腺がん 検査」
  13. National Cancer Institute. Tumor Marker Tests in Common Use.
  14. 国立がん研究センター がん情報サービス「腎臓がん(腎細胞がん) 検査」

本コラム作成にあたって参照した専門資料

  1. Sorbye H, et al. ENETS 2023 guidance paper for digestive neuroendocrine carcinoma. Journal of Neuroendocrinology. 2023.
  2. EASL Clinical Practice Guidelines on the management of extrahepatic cholangiocarcinoma. Journal of Hepatology. 2025.
  3. Krämer A, et al. Cancer of unknown primary: ESMO Clinical Practice Guideline. Annals of Oncology. 2023.
  4. SEOM-GECOD clinical guideline for cancer of unknown primary, update 2025. Clinical and Translational Oncology. 2026.
  5. Sasaki T, et al. Comprehensive genome profiling-initiated tumor-informed circulating tumor DNA monitoring for patients with advanced cancer. Cancer Science. 2025.
  6. Kotani D, et al. Molecular residual disease and efficacy of adjuvant chemotherapy in patients with colorectal cancer. Nature Medicine. 2023.
  7. 岩手医科大学附属病院 がんセンター「OTS-アッセイ」
  8. 医薬品医療機器総合機構(PMDA)「Signatera診断システム 審査報告書」2026.
  9. Natera. Signatera™ receives regulatory approval in Japan for colorectal cancer. 2026.

このコラムは、患者さん・ご家族に一般的な情報を提供するものです。個別の検査結果から診断や治療方針を判断することはできません。ご自身の数値については、主治医または担当の医療者にご相談ください。

文責腫瘍内科 川村 佳史

原稿作成

公開

最終確認

状態公開済み